倒産法ゼミ
第3回
破産財団とは、破産法の定義によれば、破産者の財産(相続財産・信託財産)であって、破産手続において破産管財人にその管理および処分する権利が専属するものをいう。
破産財団は、破産手続開始時に破産者に属する差押えの可能な一切の財産(在外財産も含む)のことである。これを、法で定められている破産財団のあるべき姿を示すものとして法定財団と呼ぶことがある。
破産手続開始時に破産管財人が破産財団に属する財産として現実に占有・管理するものを現有財団と呼ぶことがある。
固定主義とは、破産財団を構成する財産を、破産手続開始時のものに限定する建前のことである。
固定主義の理由としては、破産債権が破産手続開始前の原因に基づいて生じたものとされていることに調和し破産債権者と破産手続開始後の債権者との間の公平が図れること、破産手続開始時に破産財団の範囲が確定するので破産手続を迅速に進行できること、破産者が破産手続開始後に取得した財産を新得財産として再起を図ることができることが掲げられる。
破産財団を構成する財産は差押え可能なものであるとされているのは、破産手続が破産者の総財産を対象とする包括執行という性質をもっていることから、破産者の最低限度の生活を保障するため、民事執行法等で差押えが禁止されたり、制限されている財産については破産手続でも同様であるべきであり、むしろ、個別の財産に強 制執行された場合に比べて、生活に必要な財産を確保することが難しくなるので、一 層、その趣旨を尊重しなければならないからである。
破産財団の属地主義(日本国内で開始された破産手続は日本国内にある破産者の財産に対してのみ効力を有する)は、撤廃されている。
破産財団の範囲に含まれない財産を自由財産という。これには、新得財産、差押禁止財産などが含まれるが、破産管財人が放棄したものも自由財産となる。
第三者が、その財産について破産管財人の支配(ないしその要求)を排斥しうる場合、その地位を破産手続との関係で取戻権という。
破産管財人は、破産手続開始の決定と同時に、裁判所によって選任される(31条、74 条)。
破産管財人は、破産財団に属する財産の管理・処分を行う(78条1項)が、一定の重要事項(たとえば、不動産の任意売却など)につき裁判所の許可を得なければならない (同条2項)。
破産管財人は、現有財団を法定財団に一致させるよう活動し、現有財団を管理・換価して、配当財団(破産債権者に対する弁済(配当)に供しうる金銭)を作りだし、破産債権者に配当する。
破産管財人の法的地位の説明には、職務説、債権者代理説、破産者代理説、破産財団代表説、管理機構人格説、受託者説などがある。
破産財団代表説は、財産の集合体として財団自体に法人格を認め、管財人をその代表者とするもので(かつての通説とされる)、管理機構人格説は、財産の管理機構である管財人に法人格を認め、更に、この管理機構を担任する者を管財人とする(管財人の概念にふたつの意義を認めるもので最近の多数説とされる。)。
破産管財人の法的地位から、否認権の行使主体、財団債権の債務者などを説明する場面と、破産財団と外部の第三者との実体的法律関係の中で問題になる場面(破産者から開始決定前に土地を買った者が登記を取得していない場合、管財人に対抗できるかなど)は、区別することができる。
管財人が破産者の立場にあるのか、債権者の立場にあるのか、善意の第三者と同様の立場にあるのかの問題を、破産管財人の法的地位の説明から論理的に説明するか、個別具体的に利益状況のバランスを考慮して結論を出すかの問題である。