> TOP

> もくじ

> 弁護士

> 連絡先

> 地図

> 法律研究

> 法律相談


> 倒産法ゼミ

> 米国視察

倒産法ゼミ

第3回 <<

第4回

破産債権を行使するには、破産手続によらなければならない。個別的な権利行使は禁止され(100条1項)、届出(111条1項)、調査(116条など)、確定(124条など)の手続を経なければならない。

相殺権とは、破産手続によらないで相殺することができること、すなわち、破産手続の進行中に相殺することができ、あるいは、破産手続開始前に行使した相殺権の効力を同手続進行中も維持できる破産債権者の地位のことをいう。

破産法上の相殺権とは、民法上の相殺権とは、別個の概念であり、区別しなければならない。

破産法上の相殺権は、破産債権の個別的な権利行使の禁止(100条1項)の例外にあたる。 相殺権(67条)が認められるのは、本来、相殺の有する担保的機能(受働債権を自働債権の満足に充てることができ、債務者の財産状態が悪化したときこそ、その機能が役立つものであること)を重視したものであり、また、破産債権者が、自己の債務は 完全に履行しなければならないのに、自己の債権については破産手続による配当しか受けられないという不均衡を解消するためである。

相殺権(67条)の要件は、破産手続との関係から、民法上の相殺(民法505条)に比べて、一方で拡張(緩和)され、他方で制限されている。 破産債権は、一定の期間内に金銭による配当を受けられるように、現在化、金銭化等の等質化が行われる(103条3項、同条2項、同条4項)。この破産債権の等質化によって相殺の要件が緩和されている。たとえば、破産手続開始時に弁済期が未到来の破産債権であっても、相殺に供することができる。

債権者平等という観点から、破産債権者への公平な配当をし、破産財団の減少を防ぐため、破産債権者が反対債権である破産財団に帰属する債権にかかる債務を負担した時期に着目し(71条)、あるいは、破産財団に帰属する債権の債務者が破産債権を取得した時期に着目して(72条)、相殺の禁止を定めている。

破産手続開始を申し立てた時より1年以上前に生じた原因に基づいて相殺する場合は、 相殺が許される(71条2項3号、72条2項3号)。相殺が有効かどうか1年以上も浮動的状態に置くことは、破産債権者の予測可能性を害するからと説明されている。

破産法の定める相殺の禁止条項に反する相殺は、無効である。

破産債権者は、破産管財人に対し、相殺の意思表示をして相殺することができる(67 条)。破産債権の届出等の手続をふむ必要はない。

破産管財人は、破産債権者に対し、相殺をするかどうか催告することができる(73条)。

破産管財人は、場合により、裁判所の許可を得て、破産財団に属する債権をもって破産債権と相殺することが許されている(102条)。破産財団に属する債権の客観的価値が破産債権のそれよりも低下している場合などである。

破産手続開始時に破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者は、別除権として、破産手続によらないで、行使することができる(65条、2条 9号)。担保権は、その対象となる財産の価値によって、債権の価値を確保しようとするものであるから、債務者の経済状況が悪化したときこそ、その効用が発揮されることが期待されており、破産法は、これを尊重して、破産手続によらないで担保の目的物から優先的に弁済を受ける権利を認めたものである。

破産管財人が、破産財団に属する財産を換価して得た金銭を、破産債権者に対して、 その優劣・順位に応じて分配することを配当という(193条)。

破産財団に属するすべての財産の換価が終わった後になされる配当を、最後配当とい う(195条)。

最後配当後、破産手続集結決定により、破産手続は終了する。

破産廃止とは、破産手続を将来に向かって中止することである。

債務者の財産が少なく、破産手続の費用に不足すると認められるとき、破産手続開始の決定と同時に破産手続廃止の決定をする。これを同時廃止という(216条1項)。

破産手続の開始の後、破産手続の費用に不足すると認められるとき、裁判所は、破産廃止することができる。これを異時廃止という(217条1項)。

破産債権者の同意を得てなされる破産廃止のことを同意廃止という(218条)。

破産債権者は、配当がなされても、少額の弁済しか受けられないので、残額について、破産者(債務者)の責任を追及することができる(221条1項)。しかし、それでは、経済的な更生が著しく困難になるので、免責制度が導入されている。

免責の決定がなされたとき、破産者は破産手続による配当によって弁済されなかった債務の全額について責任を免れる(253条)。自然債務になると解釈するのが通説である。

免責制度の理念としては、破産手続に協力した誠実な破産者への特典と考えるか、債務者の再起更生のため、不誠実ではないと認められる破産者の更生の手段として考えるかにより、免責が許可されない場合の解釈に微妙な差が生じるとされている。

免責手続と破産手続は、別個の手続であるが、破産手続開始の申立てをした場合には、反対の意思を表示していなければ、同時に免責許可の申立てをしたものとみなされる(248条4項)。

租税等の請求権は、免責の効果が及ばない(253条1項1号)。

そのほか、扶養義務など 複数の非免責債権(免責されない債権)が定められている(同項)。 悪意で加えた不 法行為に基づく損害賠償請求権や、雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権、破産 者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権、罰金などがある。

 

上に戻る