民事執行法の条文の構造
弁護士 永 島 賢 也
2009/3/18
4つの手続
民事執行法1条は、強制執行、担保権の実行としての競売、及び、民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売、並びに、債務者の財産の開示について・・・と述べ、4つの手続について、定めています。すなわち、
1 強制執行(22条以下)
2 担保権の実行としての競売(180条以下)
3 民法商法その他の法律の規定による換価のための競売(195条)
4 財産開示手続(196条以下)
強制執行は、金銭の支払を目的とするものと、金銭の支払を目的としないもの、に分けられます。
金銭支払を目的とするものは、更に、不動産に対するもの(43条以下)、船舶対するもの(112条以下)、動産に対するもの(122条)、債権その他の財産権に対するもの(143条以下)に分けられます。なお、このほか、自動車執行については、特別な執行方法があります(執行規則86条以下)。
金銭支払を目的としないものは、更に、不動産・動産の引渡執行(168条・169条)、代替執行(171条)、意思表示の擬制(174条)、間接強制(172条)に分けられます。
あらためて、まとめると、次のとおりです。
1 強制執行
(1)金銭支払目的
不動産
船舶
動産
債権その他の財産
*自動車執行(規則86条)
(2)金銭支払目的でない
引渡執行(動産・不動産)
代替執行
意思表示の擬制
間接強制
2 担保権の実行としての競売(180条以下)
3 民法商法その他の法律の規定による換価のための競売(195条)
4 財産開示手続(196条以下)
各手続きの共通点
2の担保権の実行については、強制執行とほぼ同様の手続となります。というのは、担保不動産競売については強制競売を、収益執行については強制管理を、それぞれ、準用しているからです(188条、なお193条2項)。
そして、3の換価のための競売については、同様に、担保権の実行としての競売の例によるとされています(195条)。
各手続きの相違点
このように準用されたり、担保権の実行の競売の例によるとされているので、各制度について共通的な理解が可能となりますが、逆に言えば、各制度について、どのような点が異なるのかが重要になります。
たとえば、強制執行には債務名義が必要ですが(22条)、担保権の実行には、確定判決等のほか(181条、なお、193条1項)、担保権の登記に関する登記事項証明書でも足ります。
また、執行機関(執行裁判所であったり、執行官であったりします。)は、実体的な判断は原則として行っていませんが、担保権の実行に関しては、強制執行と異なり、担保権がないことなどを理由として、不服を申し立てることができます(182条)。
不服
民事執行手続に関する裁判に対し、不服を述べるときは、特別の定めがある場合は、執行抗告で(10条・一週間以内)、そうでないときは、執行異議(11条)で行うことになります。したがって、たとえば、不動産執行については、却下裁判は執行抗告となりますが(45条3項、188条)、開始決定に対する不服は執行異議となります。他方、債権執行については、却下裁判も開始決定も、いずれも執行抗告ができます(145条5項、193条2項)。
参考書式
参考書式は、ここのページにあります。
たとえば、担保不動産競売申立書の参考書式は、ここです。
以 上
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